高千穂町の山と登山


ウェストン氏の祖母山登山
 英国人宣教師ウォルター・ウェストン氏は、日本の中部山岳地帯を「日本アルプス」として世界に紹介し、後に「日本近代登山の父」と称される人物ですが、同氏が日本アルプス登山をする前年、明治23年(1890)11月6日、阿蘇山に続いて、祖母山に登っています。
 五ヶ所の旧家・矢津田家の鷹太郎氏の日記には同日付けで「英人ジョン・フランドタラン君及神戸在留同国人エストン氏同道にて祖母嶽登山往復共立ち寄らる、河内泊りの由也」とあり、当時上野村・田原村にしばしば来ていた宣教師、J.ブランドラム氏を伴って、河内から日帰りで登山したことが伺えます。布教活動を通して阿蘇〜高千穂の地理に詳しかったブランドラム氏が、ウェストン氏を招いたのかもしれません。(信仰のページ参照
 ウェストン氏の著書では日本アルプスに先駆けて祖母山が紹介されており、その展望のすばらしさが讃えられています。この功績を記念して、昭和41年(1966)、五ヶ所・三秀台公園に「ウェストン碑」が建立されました。ウェストン氏の生地・英国のヨークシャー産の石も使われた、高さ8メートルの塔です。昭和60年(1985)からは「宮崎ウェストン祭」(高千穂町・日本山岳会宮崎支部共催)が毎年11月3日に開催されています。


  
ウエストン碑全景           ウエストン肖像             ウエストン碑の矢津田日記

ウエストン碑碑文


「九州一の高山」をめぐって
 「九州で一番高い山はどこ?」もしこの質問が、「九州の7県で一番高い山」の意味であれば、答えは宮之浦岳(1935m)で、鹿児島県屋久島にあります。小さな離島に九州本島より高い山があるのですから驚きです。では「九州本島で一番高い山は?」その答えは、大分県九重山群の主峰・久住山。いくつかある峰のうち「中岳」が1791mで九州一の高度を誇っています。久住山の隣の大船山も標高1786mあります
 信仰の山でもあった祖母山(1756m)は、かつて九州一の高山と信じられていました。明治時代のいくつかの文献で、その標高をいずれも1900m前後と見積もったため「九州一は祖母山」が一旦は事実として受け止められました。ところがその後の精密測量により、この数値は大きく下方修正され、「九州一」は九重山群に譲られる事になったのです。
 しかし、1500〜1700m級の山々を連ねた18kmにも及ぶ山脈から成る祖母傾山系は、「九州の屋根」とも呼ばれ、今でも九州一の山岳地帯として登山家達に愛され続けています。


日本百名山
 登山家・深田久弥は、日本全国の山を歩き、「日本百名山」をまとめました。その選定基準は「品格・歴史・個性」の三つであったと言われています。この「百名山」をめぐる山旅は、その後多くの登山家達の目標となりました。



主な登山ルート
(コースタイムは無雪期の参考データです。無理な計画を立てるのはやめましょう。)

【参考文献】
「平和の鐘」 工藤寛、1991、平和祈念碑建設実行委員会
「九重・祖母・大崩を歩く」 五十嵐・日野・藤田、2000、山と渓谷社
「みやざき百山」 大谷優、2000、宮崎日日新聞社
「九州自然歩道を歩く」 田嶋直樹、2001、葦書房
「エリアマップ山と高原地図66・祖母・傾」 昭文社
「祖母・傾山系 登山コース概要図」 竹田市・緒方町・三重町・日之影町・高千穂町・宇目町


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